全体講評
北は北海道から南は宮崎まで、全国から243件もの応募をいただきました。応募者の皆さまに心より感謝申し上げます。審査は第1次審査・第2次審査の二段階にわたり、厳正かつ時間をかけて実施いたしました。その結果、第2次審査に進んだ作品の中から、津軽賞、優秀賞、佳作および特別賞を選定いたしました。全体として論文の水準は年々向上しており、高等学校での「総合的な探究の時間」等における学習成果が遺憾なく発揮されていると感じます。
多くの論文を拝読し、その内容の充実ぶりと質の高さには目を見張るものがありました。地域の歴史や文化を深く掘り下げたもの、具体的な調査・分析に基づいたもの、現代社会のニーズを確実にとらえたものなど、多岐にわたる力作が集まりました。受賞には至らなかった作品も含め、斬新な感性で自らの頭で問いを立て、自ら行動することでまとめ上げられた論文の数々に、私たちは深い感銘を覚えました。現場へ足を運び、試行錯誤しながら自分の言葉で紡ぎ出された考察は、既存の枠組みにとらわれない輝きを放っています。特に今回は、地域医療や高齢者のウェルビーイング(Well-being)を取り上げた論文が増えており、皆さんの関心の高さが伺えました。弘前大学は令和6年度「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択されました。この事業において本学もまた、異分野融合的な「総合知」により、グローバルなウェルビーイングの実現に向けた研究に取り組んでいます。
本コンテストへの応募をきっかけに、皆さんが地域に根ざしながらも、その枠を超えた広い視野を持ち、社会に貢献する力をさらに伸ばしていくことを切に願っています。
津軽賞実行委員会委員長
岡﨑 雅明(副学長)
個人部門
津軽賞(最優秀賞)
| 受賞者氏名 |
置田 千音 |
| 高等学校名 |
清教学園高等学校(大阪府) |
| 分野 |
分野1「歴史・文化・社会」 |
| 小論文タイトル |
龍泉寺「悪竜伝説」が物語る富田林の歴史と水資源との関係 |
講評
第4回弘前大学太宰治記念地域探究論文高校生コンテストの個人部門における津軽賞(最優秀賞)は、清教学園高等学校、置田千音さんの“龍泉寺「悪竜伝説」が物語る富田林の歴史と水資源との関係”に決定しました。
筆者は郷土の伝説で語られている竜が、人々の生業に欠かせない水と深く関係があることを知ります。その伝説には、人々を苦しめていた悪竜を蘇我馬子が追い払うと水が涸れ人々は干ばつに苦しめられ、その後弘法大師が祈祷したところ竜が再び現れ土地に水をもたらしたことが描かれていました。この話に興味を抱いた筆者は、この伝説に纏わる古刹を訪ねます。そこで目にした池と島、さらに島に祀られている神仏をみて、いよいよ水と郷土との係わりに確信を持ちます。そして二つの川に挟まれた郷土の地理と産業との関係から、水が郷土を発展させた事に思いを馳せます。文章は奇を衒わず平易でありながら読者の心に訴えるものがあり、写真がちりばめられた地図の掲載や文献検索も適切に行われています。審査員からはこの地を訪れてみたいとの感想も聞かれました。
短い文章の中に述べられている郷土の伝説が、歴史、地理、産業に至る一連の流れから郷土の文化の形成として結実された見事な論文であり、筆者の郷土への温かな思いを彷彿とさせ、郷土を愛した太宰の名を冠する津軽賞に相応しい作品であると審査員が高く評価しました。
優秀賞
分野1 「歴史・文化・社会」
本論文は、地方の多くの場所で抱える「街の活力衰退」という社会問題を取り上げた内容でした。筆者には、現状を悲観するのではなく、自分の住む地域の自然や魅力に目を向け、その良さを発信していこうという気概が感じ取れます。そのために地域が抱える問題点を分析し、関係者からのインタビューや調査を通じた提案を行なっており、論文構成もしっかりしていると感じました。提案も飛躍しすぎることなく現実味があり、自分のオリジナルな発想を加えた点も評価できます。地域の活性化に向けて将来を期待させる内容でした。受賞おめでとうございます。
分野2 「技術・環境・食」
| 受賞者氏名 |
稲吉 ひなた |
| 高等学校名 |
名城大学附属高等学校(愛知県) |
| 小論文タイトル |
目に良い環境とは |
全国的に問題となっている小中学生の裸眼視力低下について、自身の出身地である愛知県蒲郡市のデータと全国平均を比較分析し、視力保持に良い環境について考察しています。蒲郡市教育課から提供を受けた実データを活用し、蒲郡市の小中学生の裸眼視力1.0未満の割合が全国平均と比較して顕著に低いことを明らかにしました。特に中学生において全国平均60.61%に対して蒲郡市は23.0%と大きな差があることを示しています。この要因として、スマートフォンなどの情報機器の所有率に加え、山と海に囲まれた自然豊かな地域環境が日常的に遠くを見る習慣を促していることに着目した点は、地域の特性を活かした独自の視点です。「自然と触れ合い共に生きる生活環境」が目に良い環境であるという結論は、現代社会への重要な提言として評価しました。受賞おめでとうございます。
分野3 「ライフ・健康・教育」
| 受賞者氏名 |
中矢野 慧 |
| 高等学校名 |
青森県立青森東高等学校(青森県) |
| 小論文タイトル |
世界を旅するシャンプー |
「世界を旅するシャンプー」とはいったいどのような内容なのだろうか。まずタイトルから興味をひかれました。
筆者は、自身の関心のあるヘアケアに焦点を当て、多くの地域・多くの人に合うシャンプーを作るにはどうしたらよいかという課題に取り組んでいます。その課題に対し、日本製と海外製のシャンプーを対象に、身近に入手できる製品を用いながら、自ら立てた仮説に基づいて実験を行い、その内容が明確に整理されている点を評価しました。
今後、筆者自身が実際に世界を旅し、さまざまな文化や環境に触れることで、さらに多角的な視点から探究を深めていくことを期待しています。
佳作
分野1 「歴史・文化・社会」
| 受賞者氏名 |
田中 智歩 |
| 高等学校名 |
名城大学附属高等学校(愛知県) |
| 小論文タイトル |
祭りに登場する中国の架空の動物「猩々」は何者なのか? |
| 受賞者氏名 |
青木 琴美 |
| 高等学校名 |
千代田高等学校(東京都) |
| 小論文タイトル |
大田区の遺跡が箱根産黒曜石を使用しない理由 |
| 受賞者氏名 |
林 優里 |
| 高等学校名 |
京都府立北桑田高等学校(京都府) |
| 小論文タイトル |
小さな歴史を守るために |
分野2 「技術・環境・食」
| 受賞者氏名 |
新國 夢萌 |
| 高等学校名 |
福島県立只見高等学校(福島県) |
| 小論文タイトル |
伝える工夫が学びを深める |
| 受賞者氏名 |
加藤 悠 |
| 高等学校名 |
名城大学附属高等学校(愛知県) |
| 小論文タイトル |
神屋町のサボテンでの町おこし |
| 受賞者氏名 |
四茂野 真瑚 |
| 高等学校名 |
開智未来高等学校(埼玉県) |
| 小論文タイトル |
スイーツから考える北本トマトの可能性 |
分野3 「ライフ・健康・教育」
| 受賞者氏名 |
黒田 紗良 |
| 高等学校名 |
北海学園札幌高等学校(北海道) |
| 小論文タイトル |
小児患者の精神的支援に関する,植物育成実験の提案 |
| 受賞者氏名 |
北山 七海 |
| 高等学校名 |
北海道札幌国際情報高等学校(北海道) |
| 小論文タイトル |
高齢化を強みに変えるまちづくり~北見市の医療と暮らしの未来~ |
| 受賞者氏名 |
横山 斎 |
| 高等学校名 |
福島県立相馬高等学校(福島県) |
| 小論文タイトル |
原発と教育 |
特別賞
分野1 「歴史・文化・社会」
| 受賞者氏名 |
小野 時雨 |
| 高等学校名 |
京都府立北桑田高等学校(京都府) |
| 小論文タイトル |
つなぐを継なぐ |
分野2 「技術・環境・食」
| 受賞者氏名 |
吉田 くるみ |
| 高等学校名 |
福島県立相馬高等学校(福島県) |
| 小論文タイトル |
中間貯蔵施設と地権者 |
グループ部門
津軽賞(最優秀賞)
| 受賞者氏名 |
山田 結菜、横内 敬子、湯浅 璃虹 |
| 高等学校名 |
お茶の水女子大学附属高等学校(東京都) |
| 分野 |
分野1 「歴史・文化・社会」 |
| 小論文タイトル |
千葉県外房エリアの自然災害伝承碑が伝える防災教訓
-元禄地震の災害碑・古記録の調査分析に基づく津波ハザードマップの改良提言-
|
講評
まず、探究を進めるにあたっての動機(着眼点)が素晴らしいと思いました。本論文は、東日本大震災の津波被害から逃れた南三陸町の小学校の事例をもとに、津波の到達海抜を伝承する災害碑が建てられていたことに着目し、自分たちの地域に残る自然災害伝承碑がどのような意義を持つのかを追究したものです。自然災害による被害をできる限り抑えたいという、まっすぐな思いが伝わってきました。同時に、本研究は1703年の元禄地震という、約300年前の災害に関する記録を、石碑や文献という限られた史料を手がかりとして丹念にたどり、その意味を一つ一つ読み解いていく探究でもありました。
研究方法も周到に計画されていました。文献調査による調査対象碑の選定、現地調査、そして現在のハザードマップとの比較検証という三段階の構成で、読者が納得しやすい研究計画となっていました。研究成果の記述も過不足なく、古文の全文解読まで行われており、大変立派でした。解析の結果、碑文が示す被害と現在のハザードマップにおける被害想定との間に乖離があることを見出し、ハザードマップ改良への提言にまで踏み込んでいます。
着眼点、研究計画、調査と解析、そして結果の考察から導かれる新たな提言に至るまで、論文全体のストーリーが秀逸でした。文献の引用も適切になされており、総合的に判断して、本論文は津軽賞にふさわしいものであると、審査員の総意により決定しました。
優秀賞
分野1 「歴史・文化・社会」
| 受賞者氏名 |
北畠 昊、木立 進太郎 |
| 高等学校名 |
青森県立五所川原工科高等学校(青森県) |
| 小論文タイトル |
五所川原立佞武多の未来を照らす:伝統とテクノロジーの融合による課題解決への提案
|
本論文は、調査に基づく課題の抽出、分析、考察(提案)という、論文に求められる基礎的な構成を的確に踏まえており、その点が高く評価できます。特に、地域の伝統文化を対象として、通り一遍ではない根拠に基づき課題を見出し、そこから社会実装が可能な具体的提案へと展開している点は、独創性として注目に値します。こうした論旨の説得力は、ねぶたに対する実体験に裏打ちされた強い熱意の表れであると感じられました。以上の点を踏まえ、本研究が優秀賞に選出されたことを心よりお祝い申し上げます。
分野2 「技術・環境・食」
| 受賞者氏名 |
湯浅 璃虹、横内 敬子、山田 結菜 |
| 高等学校名 |
お茶の水女子大学附属高等学校(東京都) |
| 小論文タイトル |
千葉県キャベツ産地の気象データを用いた小売価格の決定要因分析
-2024年末から年明けにかけて小売価格の歴史的高騰をもたらした気象環境要因の特定-
|
本論文では、2024年末から年明けにかけて冬キャベツの小売価格が平年の3.3倍に高騰した現象について、専門家へのヒアリング調査と気象データによる時系列相関解析や小売価格と最高気温の相関分析を組み合わせた独自の研究手法で、価格高騰の決定要因を明らかにしました。特に、千葉県銚子市の栽培指導専門家への直接ヒアリングから得た知見を基に、「7月下旬から8月中旬にかけての異常高温」と「9月から10月にかけての高温傾向」が約3〜6ヶ月後のキャベツ価格高騰を誘発することを、相関係数r≒0.8という高い相関をもって実証しています。研究プロセスが明確な3つのステップ(専門家ヒアリング→データ分析→モデル化)で構成されており、論理的な展開で結論に至っている点、さらに将来の価格予測モデルの構築にまで発展させている点を高く評価しました。地域の一次産業と気象の関係性を科学的に分析し、実社会への応用を見据えた優れた研究であり、津軽賞優秀賞に相応しい作品です。
分野3 「ライフ・健康・教育」
該当なし
佳作
分野1 「歴史・文化・社会」
| 受賞者氏名 |
佐々木 寛太朗、遠藤 杏菜、柳 美有 |
| 高等学校名 |
古川学園高等学校(宮城県) |
| 小論文タイトル |
地域の人口減少を国際移住×農業で解決する |
分野2 「技術・環境・食」
| 受賞者氏名 |
平瀬 葵、渡辺 花 |
| 高等学校名 |
奈良県立磯城野高等学校(奈良県) |
| 小論文タイトル |
茎頂培養技術を用いた大和ミョウガの増殖培養条件の模索 |
| 受賞者氏名 |
横内 敬子、山田 結菜、湯浅 璃虹 |
| 高等学校名 |
お茶の水女子大学附属高等学校(東京都) |
| 小論文タイトル |
QGIS を活用したヒグマ出没情報の可視化とゾーニング管理の設計
-北海道札幌市を対象とした地理的・気象的要因分析に基づく都市計画の提案-
|
| 受賞者氏名 |
福士 陸斗、原田 旬 |
| 高等学校名 |
青森県立柏木農業高等学校(青森県) |
| 小論文タイトル |
全国初!青森式リンゴ高密植栽培実践とフェザー苗木生産
~リンゴ産業の未来に向けて~
|
特別賞
分野2 「技術・環境・食」
| 受賞者氏名 |
下山 春陽、成田 樹 |
| 高等学校名 |
青森県立柏木農業高等学校(青森県) |
| 小論文タイトル |
KIRARINGO 生半果なりんごです |
小論文投稿数(各集計)
地域別
| 地域名 |
投稿件数 |
| 青森県 |
12 |
| 北海道・東北(青森県以外) |
59 |
| 関東 |
57 |
| 中部 |
80 |
| 近畿 |
9 |
| 中国 |
21 |
| 四国 |
3 |
| 九州 |
2 |
| 計 |
243 |
※参考 都道府県別の上位3位迄
| 都道府県名 |
投稿件数 |
| 愛知県 |
77 |
| 宮城県 |
33 |
| 東京都 |
25 |
部門別
| 部門 |
投稿件数 |
| 個人部門 |
201 |
| グループ部門 |
42 |
| 計 |
243 |